糖尿病とは

糖尿病とは、血液中のブドウ糖が平常より多くなっている状態のことです。

通常、ブドウ糖は膵臓から分泌されるインスリンによってエネルギーに変換されるため、血中に蓄積されることはほとんどありません。

しかしながら、インスリンの分泌が少なくなったり、まったくなくなったればブドウ糖がエネルギーに変換されず、血中に異常な量のブドウ糖が溶け込んでしまいます。

そうすると血糖値が異常に高くなり、臓器や細胞にさまざまな障害をもらたしてしまうのです。

糖尿病の合併症として、網膜症と腎症が一般的に知られています。

糖尿病にかかると失明してしまう恐れがあると言われていますが、これは合併症として網膜症を発症しているためです。

さらに、心筋梗塞や脳梗塞などの生命に関わる合併症を引き起こしてしまうこともあるため、糖尿病は非常に恐ろしい病気といえるでしょう。



増加する糖尿病患者

糖尿病患者の数は年々増加しているといわれており、日本も例外ではありません。

2006年の時点で、世界中には約1億7100万人もの糖尿病患者がいるそうです。
WHO(世界保健機関は、2030年には糖尿病患者数は3億人を突破すると発表しています。

日本の糖尿病患者数は、40年前には約3万人でした。
それが現在では約700万人と、その数は実に230倍以上にまで膨れ上がっているのです。

主な原因は食事やライフスタイルの欧米化といわれているため、糖尿病にかからないためにも食生活の見直しはとても大切だといえるでしょう。

ちなみに、日本では徳島県の糖尿病患者数が多くなっています。
その数は20万人近くにも上り、今後も増加していくと見られているため、徳島県では「糖尿病緊急事態宣言」を宣言していますが、なかなか効果が合わられていないようです。

糖尿病は発症してからでは改善が難しいため、やはり予防治療に力を入れなければ患者数が減少することはほとんどないでしょう。



インスリンとは

インスリンとは、膵臓で分泌されるホルモンの事です。 膵臓からは、インスリンの他に食べ物を消化する膵液などを分泌しています。ホルモンとは、血液によって体内に様々な生理機能を調整するものです。 インスリンホルモンの場合は、食べ物の中の三大栄養素の一つ、ブドウ糖を身体が正常に機能する為に重要な役割を果たしてくれるホルモンです。 人間の身体の中で血糖値を上げるホルモンはたくさんありますが、血糖値を下げるホルモンは唯一「インスリン」だけなのです。そして、残念ながらインスリンを分泌する膵臓は1度ダメージを受けてしまうと元に戻らないという事です。

検査を受けた際、何も言われなくても自分の血糖値の数値を見てみて下さい。 過去 1~2ヶ月程度の間の血糖の状態を示すものに、HdA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)という数値が使われています。この数値が6.5%未満であれば血糖コントロールができているそうです。

血糖コントロール値の他に空腹時の血糖値の数値として、
・糖尿病型=126mg/dL~200mg/dL ・正常型=110mg/dL~140mg/dL
といった、数値を目安にご覧になってみて下さい。


糖尿病の症状

糖尿病は炭水化物の代謝障害を指しています。血中、また尿中のブドウ糖の量が正常値を遥かに超えている状態が糖尿病です。血中のブドウ糖の量を血糖値と言います。この血糖値が高くなると糖尿病の合併症を引き起こすまでになります。合併症は具体的には心筋梗塞や脳梗塞などを指します。糖尿病は体全体に影響してくる病気なのです。

そんな糖尿病の症状として出てくるものをいくつかチェックしていきたいと思います。これらの項目に当てはまった場合は今のところ病的だと感じなくても病院に行って検査を受けてください。糖尿病を始めとした生活習慣病に関しては、特に早期発見と早期治療が必要です。大したことない、と思わずに一度検査を受けることが大切です。
最近、尿が泡立つ、匂う、残尿感がある、頻尿になったなどの症状はありませんか?これらは糖尿病の代表的な症状として現れます。次に食べ物や食欲に関する項目です。甘いものが急激に欲しくなったり、口が常に渇いているという症状も糖尿病の症状です。糖尿病だけと限定は出来ませんが味覚が急に変わったり舌が頻繁にしびれるという方も注意が必要です。

体全体に現れる糖尿病の症状のチェック項目です。糖尿病の症状は主に足に出やすいので足に特に注意してみてください。足のむくみがひどかったり重みを感じる、しょっちゅう痙攣を起こしたりこむら返りを起こすようであれば糖尿病の可能性が高いです。

糖尿病の可能性は足のむくみなどよりも低いですが立ちくらみ、めまい、膝の痛みなども糖尿病の症状のひとつとして現れます。



糖尿病の3大合併症

糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症を3大合併症と呼ぶ。糖尿病に特有の合併症で、血糖コントロールをしないでいると、糖尿病発症時から10~15年でこれらの合併症が出てくるといわれる。

糖尿病網膜症糖尿病網膜症になると、目の底にある網膜の血管が悪くなり、視力が弱まる。中には失明する場合もある。また、白内障になる人も多いといわれている。

糖尿病神経障害合併症の中で最も早く出てくるのが糖尿病神経障害。末梢神経障害の足や手の症状はさまざまで、手足のしびれ、ケガや火傷の痛みに気づかないこともあります。そのほか筋肉の萎縮、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常、インポテンツ、EDなど、さまざまな自律神経障害の症状も現れます。

糖尿病腎症糖尿病腎症になると、尿を作る腎臓の糸球体の毛細血管が悪くなり、だんだんに尿が作れなくなります。すると人工透析(機械で血液の不要な成分をろ過して、尿を作る)を行なわなければなりません。週に2~3回、病院などで透析を受けるようになるので、日常生活に大きな影響を及ぼします。現在、人工透析になる原因の1位がこの糖尿病腎症です。



糖尿病による足の症状

糖尿病による足への影響も非常に大きく 糖尿病によって年間数千人も足を切断しています。

糖尿病による足の症状が感覚的に問題があると感じることができないで放置されることが 最大の原因です。

糖尿病による足の症状にはどんなものがあるでしょうか?

代表的な症状

足の先がジンジンしびれたり、時にピリピリとする。
思い当たることがないのに指先がハッキリと痛む
比較的小さな怪我・傷がなかなか治らない。
皮膚が乾燥・ひび割れる。
水虫などの感染症にかかる、急にひどくなる。
皮がむけやすくなったり、急に魚の目などができる。
足がよくつったり痙攣する
足の裏の感覚がおかしい、違和感がある。


気にしないで放置してしまうことが 多いので、いよいよ血糖値が上がってきて、おかしいと強く思うときには相当 合併症も進んでいる場合がほとんどです。

自覚症状が出るころには足に関する糖尿疾病はかなり進んでいる場合が多いので 慢性的な違和感には鋭敏に反応し気をつけることが糖尿病による足の壊疽など重篤な疾病を 予防することとなります。

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糖尿病の初期症状

糖尿病の初期症状としては以下のようなものあります。

喉がよく渇く
水や清涼飲料水をよく飲む
尿の量が多くなった
食事を減らしてないのに体重減少する
体がだるく疲れやすい


糖尿病の初期症状として痛みなどはないため非常にわかりにくく、健康診断などで血糖値の異常を指摘されるまで気づかない人が殆どです。

早い段階で、糖尿病に気づき適切な食事療法や運動療法をきちんと行うことで、糖尿病の進行は抑制できます。

上記の症状があり、糖尿病の心当たりや不安がある人は、すぐに病院で医師に相談しましょう。

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糖尿病の末期症状

血糖値が高い状態が続くと動脈硬化が進行していき心筋梗塞や脳卒中などの症状を引き起こす場合があります。

糖尿病の症状が進むことにより、身体の様々な部位に症状があらわれてきます。

目が見えにくくなる、目がかすむ、視力が落ちたなど
できものができやすくなったり、傷が膿みやすいまたは治りにくい
皮膚がかゆい
陰部がかゆい
歯がぐらぐらする
口臭がする
急激に体重が減少する
抵抗力がなくなり病気になりやすくなる


さらに放置し症状が進むと、合併症として失明したり、腎不全を起こし人口透析が必要になったり、四肢などのささいな傷から細菌が入り感染を起こし壊疽になり、最終的には下肢の切断が必要になることもあります。

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糖尿病の全身の症状

脳→脳梗塞・脳出血、糖尿病性昏睡
顔→顔面神経麻痺
目→白内障、緑内障、糖尿病性網膜症(※)、
歯→歯周病
皮膚→潰瘍壊疽、皮膚感染症
心臓→起立性低血圧(立ちくらみ)、狭心症、心筋梗塞
肺→肺炎、肺結核
腎臓→腎盂腎炎、糖尿病性腎症(※)
腸→下痢、便秘
膀胱→膀胱炎
生殖器→勃起障害、皮膚感染症
四肢→手足のしびれや痛み、下肢閉塞性動脈硬化症、こむらがえり、むくみ、糖尿病性神経障害

��※)は糖尿病の3大合併症と呼ばれています。

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怖い低血糖について

インスリンがうまく働かずコントロールできない状態では高血糖の逆に低血糖になる場合もあります。低血糖にの症状としては

冷や汗
体の震え
吐き気
めまい
倦怠感や疲労感


低血糖が進むと意識障害を起こして、昏睡することもあります。
糖尿病は高血糖の病気ではありません。

早期に発見し適切な治療をしなければ、失明や腎不全などの合併症を起こし、最悪の場合、命をおとすこともあります。

早期発見、早期治療を適切に行い症状を進行させないこと、また合併症を防ぐことが糖尿病では大変重要となるのです。

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糖尿病の検査の種類「尿糖検査」

糖尿病の一般検査として尿試験紙による検査が一般的です。

この検査で尿糖が出た場合、糖尿病が疑われるためさらに詳しく調べるため血液検査を受けることになります。

また尿糖測定は治療して行く上でも血糖コントロールの効果を確認できる手段としても用いられます。

腎臓は、血液中の老廃物を濾過して尿として排泄する働きをする臓器です。

糖は身体の中でエネルギーとなりそのほとんどは再吸収され血液に戻ります。そのため健康な人の場合、尿糖はほとんど検出されません。ところが血糖が異常に高くなると、腎臓が再吸収しきれない糖が出てきます。

こうした再吸収しきれなかった糖は尿中に排泄されます。このため、尿糖が検出されることになります。この尿糖の検査は尿に試験紙を浸し変化を見るだけのもので痛みもなく簡単に行えます。

このように尿糖値は、尿中に排泄された糖を測定し排尿から次の排尿までの間の血液の状態を知ることができます。

このときの血糖値は腎閾値と呼ばれます。

インスリン作用が不足していたり、食べ過ぎなどで腎閾値を超えた高血糖状態になった場合は、尿中に糖が排泄され、この値により食後の高血糖状態であったことを間接的に知ることができるのです。

個人差はありますが、一般的には腎閾値は血糖値にすると160~180mg/dL以上と言われていますので、尿糖が出たら血糖値も上がっていると考えられます。

ただし、健康な人であっても、過労など体調によっては尿糖が出ることがありますので一概には言えません。また、体質により尿糖が出やすい人、出にくい人もあります。

尿糖検査結果の見方
陽性(+~+++) 糖尿病が疑われます。ブドウ糖負荷試験の血糖検査を受けます。
陰性(-)    糖尿病の疑いを完全に否定はできません。
尿糖測定でのポイントとしては、まずは食事開始直前に一度排尿しておくことです。尿糖検査の場合はだいだい食後2時間の尿を測定することが一般的です。事前に排尿し食事をしたあと、このタイミングで排尿し尿糖検査することで食事以前の尿が含まれることなくより正確な値に近づきます。

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糖尿病の検査の種類「血糖検査」

血糖値とは、血液中に含まれる糖の値のことを言います。この血糖値は運動や食事、特に食前(空腹時)か食後などでも変化しますので、血糖測定ではその採血をした時の血糖値を測定し知ることができます。

食後の血糖は変化が早く、1回の測定での判定には無理があり、通常は2回以上の測定が必要になります。

しかし、血糖測定は穿刺採血が必要なため頻回測定するには、身体への負担も少なくありません。

血糖検査の結果
126mg/dL以上→糖尿病域…糖尿病が強く疑われますのでブドウ糖負荷試験を受けます。
110mg/dL以上→126mg/dL未満→境界域…糖尿病の疑いがあります。できるだけブドウ糖負荷試験を受けるようにしてください。
100mg/dL以上→110mg/dL未満→正常域…血糖値がやや高いめです。他の生活習慣病がある場合、できるだけブドウ糖負荷試験を受けるようにしてください。
100mg/dL未満→正常域…現在、糖尿病の心配はほとんどありません

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糖尿病の検査の種類「ブドウ糖負荷試験」

糖尿病の精密検査として、実際にブドウ糖を経口から摂取して、血糖値がどのように変化するかを見るブドウ糖負荷試験があります。

まず75gのブドウ糖を含む飲料を飲みます。その後、血糖の時間的な変化を調べるため決められた時間に採決をしていきます。

その各時間の採血により測定された血糖測定値で下記のように判定されます。


ブドウ糖負荷試験検査の結果
ブドウ糖を飲む前の血糖値が110mg/dL未満で、ブドウ糖を飲んだ2時間後の値が140mg/dL未満の場合→正常型
空腹時の血糖値が126mg/dL以上、ブドウ糖を飲んだ2時間後の値が200mg/dL以上の場合、もしくは随時血糖値が200mg/dL以上であった場合→糖尿病型
この2つの型のどちらでもない場合は「境界型」と呼ばれます。この検査で2回以上「糖尿病型」と判定された場合、糖尿病と診断されます。この検査結果に加え「糖尿病の典型的症状がある」「HbA1cが6.5%以上である」「糖尿病性網膜症がある」の3つのどれかがあてはまる場合なども、糖尿病として診断されます。
           
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糖尿病の検査の種類「HbA1C検査」

HbA1C(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)検査では、血糖コントロールの判断できる検査です。

血液中にあるヘモグロビンは赤血球内のタンパク質の一種です。ヘモグロビンは肺から血液の中に取り込まれてきた酸素と結合し全身の細胞に酸素を送る働きをしています。

血糖値が高くなると、酸素よりも血液中のブドウ糖がヘモグロビンに結合してしまい、グリコヘモグロビン(HbA1C)というものに変化してしまいます。

HbA1C検査は、血液中のヘモグロビンのうち、このグリコヘモグロビンにどれくらい変わっているのか、その割合を調べる検査となります。

またグリコヘモグロビンは一度できるとその赤血球が死ぬまで消滅ないという特性を持っています。

さらに赤血球は約4カ月の寿命ですから、HbA1C検査は過去1~2カ月間の血糖コントロール状態を見ることができるのです。

そのため糖尿病検査の数日間前だけ食事療法を一生懸命やっても HbA1C検査ではすぐにわかってしまいます。

HbA1C検査の結果
HbA1Cは6.5~7%未満が理想的です。
HbA1Cにおいては血液中の何%の割合かでみていきますが、この1%違いが実は合併症の進行を大きく左右しているのです。
ある調べにおいてはこのHbA1C1割下がることで、糖尿病合併症の一つである網膜症の進行の危険性が40%以上減るとも言われているようです。

9.1%以上→→不良
8.1~9.0%→→やや不良
7.1~8.0%→→良
��%以下→→正常値

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糖尿病の検査の種類「フルクトサミン検査、グリコアルブミン検査」

フルクトサミンとは、血液中のタンパク質がブドウ糖と結合してできる物質です。このフルクサミンの量を調べることで、血液中にブドウ糖がどの程度増加しているかを知ることができます。

またグリコアルブミン検査とは、血液中のタンパク質の主要成分であるアルブミンが、どの程度ブドウ糖と結合しているか調べる検査です。

グリコアルブミンの基準値としては約12~17%です。これより高いようなら、血糖値が高い状態が続いているということになります。

この2つの検査では、過去約2週間の血糖コントロール状態を見ることができます。

HbA1C検査ではわからない、比較的短期間での血糖の変化をとらえることができるのが特徴です。なので低血糖、高血糖を繰り返しやすい人の血糖コントロールの目安や、薬物療法を始める時にその薬の効き具合を確かめたりする時に役立つ検査です。

グリコアルブミン検査の結果
30%以上→→不良
25~30%→→やや不良
20~25→→良
16~20→→正常値

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糖尿病の検査の種類「1,5-AG検査」

1,5-アンヒドログルシトール検査または1,5-AGと呼ばれる検査です。

1,5-AGは糖の一種で、ブドウ糖と似た構造をしています。血液中に糖が増えることで、尿中への1,5-AGの排泄が亢進します。

そのため血液中の1,5-AGの濃度が急激に減少します。このことより1,5-AGが、急に減少している場合、血糖コントロールがうまくできていないということになるのです。

この検査は軽度の高血糖に敏感に反応します

血糖値のように食事や運動には影響されないので過去数日間の血糖値の指標となり、宴会などによる短期間のコントロールの悪化も見逃すことなく知ることができます。

そのためまた、食事療法や運動療法の効果をすぐに結果として知ることもできます。
  
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糖尿病の食事「1日の摂取カロリー量を計算」

糖尿病の食事療法の基本は一日の食事で必要なエネルギー量を知ることです。

標準体重=身長(m)×身長(m)×22(BMI)

1日の摂取カロリー=標準体重×生活強度

��生活強度
サラリーマン・主婦など軽労働の人:30
動きの少ない高齢者の人:25
工事現場作業員など重労働者:40

ここで計算した1日の摂取カロリーを3食でできるだけ均等にとり、かつ栄養のバランスをよくすることが理想です。

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糖尿病の食事「カロリー計算」

糖尿病の方の食事の1日の平均カロリーは1600キロカロリーだといわれています。

食材ごとにカロリー量が記載された「食品交換表」を参考にしてカロリーを計算しましょう。

1単位を80キロカロリーとし、それを20単位食べるというように計算すると良いようです。

ごはん・芋・小麦粉 11単位
果物 1単位
魚介・肉・卵・大豆 4単位
牛乳・乳製品 1.4単位
油脂 1単位
野菜 1単位
味噌 0.3単位
砂糖 0.3単位


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糖尿病の食事「カロリー制限より炭水化物制限」

日本の糖尿病の食事療法は、カロリー制限を中心に行なわれています。

現在の研究によれば、炭水化物が血糖値を上げることがわかっており、欧米では、炭水化物をコントロールする食事が糖尿病の食事療法となっています。

炭水化物は消化されるとグリコーゲンになります。

血液中にグリコーゲンが増えると血糖値が上がり、血糖値を下げるためにインシュリンが分泌されます。
インシュリンが分泌されると体は脂肪を蓄え始めます。

従って、インシュリンが分泌されないように、血糖値を上げないような食生活をすることが必要です。

精製された炭水化物ほど血糖値が上がりやすいと言われています。

玄米より白米、茶色い食パンより白い食パン、小麦粉を練った製品(パスタ等)よりシリアルの方が上がりやすいのです。

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糖尿病の食事における注意点

糖尿病を予防する食事・生活習慣とは、まずは食べ過ぎないこととバランスよい食事をすることです。

●緑黄色野菜を摂る。

厚生労働省によると、野菜を1日に350g以上、特に緑黄色野菜を120g以上摂ることを目標としています。

●亜鉛を摂る

糖尿病の人はインスリンの作用が十分でないため、細胞が十分な量のブドウ糖を血液中から取り込むことができません。その結果、体のエネルギーが不足し、疲れやすくなります。すい臓でインスリンを作る際には、亜鉛が欠かせません。亜鉛にはインスリンの働きを持続させる働きもあります。

●甘いものや脂っぽい食事を避ける。

甘いものや脂っぽいものは太りやすい食品ですので、食べ過ぎには気をつける。

●薄味の食事をする。

濃い味の食事をしているとごはんをたくさん食べてしまいがちのため、薄味の食事にしましょう。

●決まった時間に時間をかけて食事する。

ゆっくりかんで食事をすることが満足感を与えます。

●アディポネクチンを増やす。

アディポネクチンが2型糖尿病予防に役立つとして注目されています。アディポネクチンを増やす食品は、マグネシウム・食物繊維を多く含む海藻類、青魚、大豆などといわれています。

ちょっとした生活習慣の改善が糖尿病予防に役立ちます。

●糖尿病の予防には白米より玄米

米ハーバード大などの研究チームが、玄米などの全粒穀物を食べる人たちは、白米その他の精白した穀物を食べる人よりも2型糖尿病を発症するリスクが低い、とする研究結果を発表した。

●血糖値を上げやすいメニュー

炭水化物は血糖値を上げやすく、脂質は血糖値を下げにくくする。

お酒を飲むと、血糖値が下がり、食欲が増すと考えられており、つい食べ過ぎてしまうことが多いため、注意が必要。

ブドウ糖は血糖値を上げやすいため、摂り過ぎには注意。

朝食を食べないと、昼食を食べたときに血糖値が大きく上がる。

●血糖値を抑える食べ方

��.1口30回噛む

早食いをすると、インスリンの分泌が間に合わないため、急激に血糖値が上昇します。

��口30回噛むこと、つまりゆっくり食べることで血糖値の急激な上昇を抑えることができるというわけです。

��.食物繊維の多い野菜から先に食べる

糖分が食物繊維に絡まり、通常よりゆっくりと吸収されるため、食後の血糖値の上昇を抑えることができるそうです。

��.食後一時間以内にエネルギーを消費する

食後一時間以内に運動や入浴をすると、血糖値は抑えられるそうです。

運動や入浴で汗をかくと、エネルギーとして糖分が消費され、血糖値が抑えられる。

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糖尿病の薬物治療:α-グルコシダーゼ阻害薬

糖尿病でも「空腹時の血糖値はそれほど高くはないけれど食後に急激に血糖値が上昇する」という糖尿病の方に用いられるのが「α-グルコシダーゼ阻害薬」商品名はベイスン錠、グルコバイ錠です。

ただ、この薬は血糖値を下げる為の薬ではありません。
あくまでも糖尿病の原因の一つである生活習慣の改善の手助けをしてくれるにすぎません。

「α-グルコシダーゼ阻害薬」はインスリン分泌を促進して血糖値を下げるのではなく、糖質の消化吸収を遅らせることで食後の急激な高血糖(食後過血糖)を抑えるお薬です。

口から摂取された糖類は小腸粘膜に存在する「α-グルコシダーゼ」という酵素によって分解され、単糖類であるグルコース(ブドウ糖)に姿を変え体内に吸収されます。

この「α-グルコシダーゼ阻害薬」はその名前の通り、「α-グルコシダーゼ」を阻害する作用を持つ薬で、この酵素のはたらきを阻害することによって、糖類が分解されるのを防ぎます。

そして小腸からのグルコースの吸収を遅らせ、食後の急激な血糖値の上昇を抑えます。

この薬の副作用ですが、「α-グルコシダーゼ阻害薬」自体には血糖値を下げる働きはありませんので急激な低血糖で意識がなくなるとかの副作用はありません。

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糖尿病の薬物治療:スルフォニル尿素剤(SU剤)

血糖値を下げる働きのインスリンの分泌を促進させるための薬として、糖尿病内服治療薬の中では、最も多く使用されている薬が「スルフォニル尿素剤(SU剤)」です。

「スルフォニル尿素剤(SU剤)」はインスリンを合成する膵臓のβ細胞に働き、インスリンの基礎分泌を促進させる薬です。

主に1日の血糖値を全体的に下げるために使用され、作用は数時間にわたり持続しますので、空腹時の血糖も高くなってきている方に処方される薬です。

この薬は作用が強いため低血糖への注意が必要ですし空腹時の血糖値を下げる効果により食欲が増加して肥満を助長する可能性もあります。

「スルフォニル尿素剤(SU剤)」を飲んでいるから血糖値は正常に近い値で大丈夫などと考え暴飲暴食を続けると肥満の恐れがあるばかりか薬の効果が得られなくなり更なる薬の追加や症状の悪化にもつながりますので注意が必要です。

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糖尿病の薬物治療:グリニド薬

インスリンの分泌を促進させる薬として、グリニド薬があります。

グリニド薬はインスリンの追加分泌を促進させるための薬です。

この薬は主に食後血糖の高い軽度のⅡ型糖尿病の方に処方されます。

通常、健康な方は空腹時に血糖値が下がり食後2時間程度で血糖値が下がりはじめ正常値に戻るわけですが糖尿病患者の場合インスリンの作用が上手くいっていないため食後の血糖値が高い状態が続いてしまいます。

グリニド薬は食後の血糖値を下げるためのインスリンの追加分泌を助ける薬です。

注意点としては食事の直前に薬を飲まないと効果が得られないこと、「スルフォニル尿素剤(SU剤)」と併用はできないというです。

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糖尿病の薬物治療:ブグアナイド薬

ビグアナイド剤とは、糖尿病治療薬のひとつです。

筋肉および脂肪組織において糖の消費を促進すると共に腸からの糖吸収を抑制し、血糖値を下げる作用を持ちます。

ビグアナイド剤は、長い歴史を持つ経口血糖降下剤で、昔からSU剤(スルホニル尿素剤)と並んで広く利用されてきました。

近年では、ビグアナイド剤がSU剤と異なり、インスリンの分泌を促進することなく血糖値を降下させることが分かったことから、再評価されている。

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糖尿病の薬物治療:チアゾリジン薬

骨格筋および肝臓におけるインスリン抵抗性を改善し、インスリンの相対的な作用を高めて血糖値を下げる。薬剤自体がインスリンの分泌を促すわけではないので、単独使用で低血糖の危険は少ないという特徴がある。

•インスリン受容体に作用してインスリン抵抗性を改善する。肝で糖産生が抑制され末梢で糖利用が高まる。

•インスリン抵抗性改善による血糖降下作用を示し、単独での低血糖はほとんどみられないが、低血糖がある薬剤との併用には注意。

•副作用として肝機能障害、浮腫、心不全、肝障害、体重増加に注意する。

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糖尿病の運動療法

運動療法は、血糖値を下げ、体重が減り、血液の循環が良くなるなど、たくさんのメリットがありますが、最大のメリットは「インスリンが効きやすい体になる」ことです。

 2型糖尿病患者の人は、インスリンに対して筋肉細胞や脂肪細胞の反応が鈍くなっていますが、運動を続けることによってこのような状態が改善されます。

運動としては、酸素を十分に取り入れて、体全体の筋肉をつかう有酸素運動が効果的だといわれています。

有酸素運動は、1回に20分から40分行い、週3回実施するとよいといわれています。無理なく、そして楽しくできる運動を生活に取り入れて、習慣にして長く続けることが大切です。

有酸素運動の例
・ウォーキング
・自転車
・水泳
・ジョギング
・ラジオ体操

 
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糖尿病の運動療法で気をつけること

飲み薬(経口血糖降下薬)やインスリン療法などで薬物療法を実施している人は、運動中に低血糖になる可能性があります。

必ずブドウ糖やジュースなどを持ち歩きましょう。運動する時間帯は、低血糖の心配が少ない食後に行うとよいでしょう。

【運動時の主な注意事項】
1型糖尿病患者
・運動は食事の後1~3時間に実施しましょう
・運動量が大きい場合は、運動まえのインスリンを減量しましょう
・運動前・中・後に補食をしましょう
 
2型糖尿病患者
・薬物療法を行っている患者さんでは、できるだけ食後に運動をしましょう
 (薬物療法を実施していない患者さんは、食事前に運動をしても構いません)
・インスリン療法を行っている患者さんでは、運動前のインスリン単位を運動に応じて2/3から1/2に減量することが薦められていますが、具体的な単位についてはかかりつけ医へご相談下さい

【運動療法が禁止・制限される場合】
・血糖コントロールが極端に悪いとき
 (尿ケトン体が中等度以上の陽性)
・増殖網膜症(ぞうしょくもうまくしょう)による眼底出血があるとき
・腎不全の状態
・虚血性心疾患(きょけつせいしっかん)や心肺機能に障害があるとき
・骨・関節の病気を持っているとき
・急性感染症(例として、インフルエンザなど)
・糖尿病壊疽(えそ)
・高度の糖尿病自律神経障害


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糖尿病と食事療法

糖尿病を改善する第一歩は食事療法です。

日々の食事に工夫を凝らし、糖尿病の改善に活かすことは取り組みやすいためです。

食事療法は比較的取り組みやすく、血糖値を低くする効果が望めます。

糖尿病において食事療法するには、これまでの食事を見直す必要があります。

とくに、2型糖尿病は原因に、カロリーが高い食事や栄養バランスが偏ったメニューなどがあります。

脂肪を避けて、ビタミン・ミネラル、食物繊維たっぷりの食事内容にしていくことが大切です。

糖尿病の食事療法は、摂取カロリーを標準体重から算出し、カロリー内に収まるようにメニューを決めていく作業が必要です。

標準体重の算出方法は、身長(m)×身長(m)×22です。

この値を使って、標準体重に生活活動強度を掛け合わせたものが適切な1日摂取カロリーとなります。

生活活動強度はレベルごとに25~40に振り分けられます。

サラリーマンであれば、生活強度Ⅱ(中等度)の30~35を掛けると良いでしょう。

糖尿病では食品交換表の活用も大切です。

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糖尿病と感染症

糖尿病と感染症

糖尿病の人は感染症にかかりやすく悪化しやすいのです。

人間の体は、体内に侵入しようとするウイルスや細菌と常に戦っています。これを感染防御機構といいますが、糖尿病では次のことから、感染防御機構が容易に破綻してしまうのです。

(1) 好中球の貪食機能の低下
 好中球〈こうちゅうきゅう〉は白血球の成分のひとつで、体内にウイルスや細菌が侵入すると、それを取り囲んで食い殺します(貪食〈どんしょく〉)。血糖値が高くなると、この機能が低下します。

(2) 免疫反応の低下
 免疫反応とは、一度感染した病原体に対し、体内でそれに対する抗体が作られ、次に同じ病原体がからだに侵入しようとしたときに、それを防ぐように働く仕組みのことです。高血糖では、この免疫反応も弱くなっています。

(3) 血流が悪くなる
 高血糖では、細い血管の血液の流れが悪くなります。このような状態では、酸素や栄養が十分に行き渡らず、細胞の働きが低下したり、白血球が感染部位に到達しにくくなって、感染しやすくなります。内臓の血流も悪くなっているので、肺炎や胆のう炎、膀胱炎、腎炎など、内臓の病気も起こりやすくなります。
 さらに、感染で受けたダメージの回復にも時間がかかりますし、抗生物質などの薬物治療でも、薬が感染部位に到達しにくいため、薬の効果が弱くなります。

(4) 神経障害が感染・悪化の一因に
 糖尿病の合併症の神経障害があると、内臓の活動が乱れやすく、膀胱炎や胆のう炎の原因になります(コラム参照)。また、痛みを感じる神経も障害されるので、症状が現れにくく、感染症に気付くのが遅れ、その間に病気が進行してしまいます。

(5) 血糖値がより上昇する
 一度細菌類に感染すると、インスリンを効きにくくする物質(サイトカインなど)が多くなって、血糖値は普段よりも高くなります。このことが糖尿病の状態をより悪くしてしまい、感染症をさらに進行させてしまうという悪循環が生まれます。


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糖尿病とインスリン

糖尿病の治療にインスリンを投与されている人は大勢います。

インスリンは、糖尿病の種類や進行速度にも差があるものの、必要不可欠なものとして認識されています。

インスリンは、すい臓にあるランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるペプチドホルモンです。

炭水化物の代謝を調節する機能があります。

肝臓での糖新生を抑制したり、脂肪の合成促進と分解抑制など生理作用があります。

血糖値を低くする作用が判明したのが1901年、病理学者ユージン・オピーが糖尿病はランゲルハンス島がダメージを受けて発症することがわかりました。

1921年にはインスリン抽出に成功、翌1922年には医薬品として製造がはじめられました。

1980年になると、遺伝子工学を使い副作用が少ないヒトインスリンの生産がはじめられ、現在にいたります。

糖尿病ではインスリンは頻繁に用いられていますが、投与されるのは糖尿病が悪化している患者さんや、1型糖尿病のケースだけだと思われている人もいるでしょう。

しかし、肝炎をはじめ感染症を起こしているケースや薬物アレルギーがある人、食事療法や運動療法をしても投薬療法で血糖値がなかなか下がらない人など一人一人の状況によっては、糖尿病が軽度であってもインスリンが不可欠となることもあります。

現在は血糖コントロールを確実にするためか、糖尿病の早期から用いられるケースも増えています。


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高齢者の糖尿病

 糖尿病になる人数は、年齢とともに急増しますが、最近の調査では、60歳を超えると6人に1人が糖尿病という数字になっています。

加齢とともに、糖尿病性の合併症の頻度が高くなり、加えて、動脈硬化などの病気も出てくるため、一人でいくつもの病気に苦しむ人が増えます。

高齢者の糖尿病といっても、治療法や療法の方法については、患者さん一人一人の病状と、個人的な生活背景も考慮したきめの細かい工夫が必要になってくる点が、大きな特徴といえるでしょう。
 

高齢者の糖尿病の特徴
(1) それまでの治療法や生活様式などによる、個人差が大きい。
(2) 身体のインスリンの分泌と末梢組織での効き方の両方が加齢とともに低下し、血糖値が高くなる。
(3) 腎機能が低下し、尿糖が血糖値の割に少ない。あるいは薬剤の蓄積が起こりやすい。
(4) 網膜症や神経障害など、糖尿病性の合併症の頻度が高くなる。
(5) 動脈硬化症が、加速度的に進展しやすい。
(6) 多病の人が増える
(7) 自覚症状が出にくく、また異常があっても年のせいにして見すごすことが少なくない。
(8) あきらめや家族への遠慮などで、治療への意欲が低い。
(9) それまでの生活習慣を、なかなか変えられない。


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糖尿病の合併症

糖尿病には合併症が数多くあります。

糖尿病が怖がられている理由は、合併症のなかに命にかかわる深刻なものや、日常生活に多大な影響をおよぼす疾病が多いためです。

糖尿病には三大合併症といわれるものがあります。

三大合併症とは、糖尿病性神経障害・糖尿病網膜症・糖尿病腎症をいいます。

高血糖の状態から血管がダメージを受けたり、神経の障害により体の至る所に異変を起こしてしまいます。

合併症はほかにも心筋梗塞や脳梗塞、壊疽、乳酸アシドーシス、白内障、皮膚炎があるいっぽう、歯槽膿漏という一見、糖尿病とは何の関係性もないような歯の悩みも合併症と見られるケースがあります。

糖尿病の合併症は、急性と慢性に分けられます。

急性合併症は上記ですが、慢性状態では血糖値が顕著なケースで起こる糖尿病性昏睡や、ケトアシドーシス性昏睡、高浸透圧性高血糖症候群などがあります。

糖尿病による合併症で死亡する人は多いです。

合併症を誘発しないように、積極的に治療しましょう。



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糖尿病と眼

糖尿病の合併症には視覚障害があります。

糖尿病網膜症、白内障、血管新生緑内障が主です。

どれも重度になると失明する危険性がある視覚障害です。

自覚症状があらわれなないのが、糖尿病による眼病の怖い点でしょう。

失明を防ぎ、視覚障害を起こさないためには、定期的に糖尿病の検査を受けて、眼底検査で早期発見に努めましょう。

眼底検査では、目に光を照射して検眼鏡といわれる検査機器を用い、眼の網膜の状態を検査します。

糖尿病ならば小さなシミや出血、損傷があるため、糖尿病による眼の合併症を発症させているかどうかが診断できます。

合併症により視覚障害になる人は、1年間で3,000人。

糖尿病発症からちゃんとした治療を受けないまま7年以上経過したケースでは危険性が高まります。

長い間、糖尿病の治療を受けている人の80%以上は何らかの視覚障害を起こすとされます。

視力を失うと日常生活も非常に不自由になるため、糖尿病になったら眼のケアも確実にして、合併症予防に努めましょう。


      
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糖尿病と血管

糖尿病になると、高血糖から血管に負担が生じ、いろいろな疾病リスクを大きくします。

糖尿病は動脈硬化の症状を悪くさせると分かっています。

さらに進むと心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわるような重病を呼び寄せるリスクがあります。

糖尿病患者と糖尿病ではない人を比較すると、脳梗塞にかかるリスクは3倍ぐらいの差があるとされます。

心筋梗塞も、糖尿病の症状に神経症があるため、一般の人よりも発症率が上がります。

閉塞性動脈硬化症といわれる足の血管に起こる障害も、糖尿病患者はそうでない人よりも3倍なりやすいみたいです。

動脈硬化は高血圧が原因の事も多いのですが、糖尿病の血糖値コントロールも非常に大切です。

とくに高血圧や動脈硬化などは自覚症状もわずかであり、治療を放置したままでいれば急性発作を起こして死ぬかもしれない怖い病気です。

日常生活から食事療法などで気をつけることが不可欠です。

さらに、糖尿病の検診も定期的に受け、早期発見に努めましょう。

仮に血管内にダメージを受けていても素早く対処できるはずです。

血管を正常な状態に維持することは健康で長生きに結びつきます。



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糖尿病と神経障害

糖尿病の症状でもとりわけ危険度が高いといわれるのが神経障害です。

命の危機になる時もあるため、合併症予防には十分注意したいものです。

糖尿病が神経にどんな影響をおよぼすかといえば、高血糖値の状態が長期間続くなかで神経細胞の中にソルビトールという物質が少しずつ溜ります。

ソルビトールは神経に障害を起こし、体のあらゆる部分に神経障害の症状が起こってきます。

糖尿病性神経障害は原因や症状ごとに、多発性神経障害、自律神経障害、単一性神経障害に区別されます。

糖尿病にともなう神経障害の具体的な症状は、しびれ、感覚麻痺(まひ)、発汗異常、起立性低血圧や膀胱異常といったように、いろいろとあります。

神経障害が悪化すると、神経麻痺が起こり、痛みなどに対する感覚が薄れてしまいます。

あなたが知らぬ間にケガや火傷 (やけど) を起こし、そのまま壊疽により足などを切断したり、無痛性心筋梗塞の発作や無自覚性低血糖による突然の意識喪失で突然死だってあります。



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糖尿病と腎臓

糖尿病の三大合併症の一つが糖尿病腎症です。

腎臓は体の不純物を尿として体外に排出する大切な器官ですが、腎臓がダメージを被ってしまうと腎不全を起こして尿毒症になって、腎臓移植か人工透析を受けなければ生命が危機です。

糖尿病の血糖値が高い状態は、腎臓にとり大きな負担です。

腎臓には糸球体という毛細血管が集った部分がありますが、糖尿病はこの血管を硬くします。

硬くなった血管は血管内が狭くなると、腎臓のろ過機能が低下して、タンパク尿が出るようになり、尿毒症になってしまいます。

糖尿病の影響以外にも、腎臓は自覚症状があらわれにくい臓器ともいわれます。

糖尿病腎症予防には医師の検査を、それも微量のタンパクを検出する微量アルブミン検査が効果があり、年数回の検査が望ましいといわれます。

糖尿病腎症は人工透析になる原因のトップとされているだけに、前向きな対策が大切でしょう。

なお、糖尿病は血圧とも深く結びついているため、血糖と血圧コントロールも効果的です。

悪化を防ぐため、タンパク質が少ない食品や、塩分を控えて、体調の変化にも注意します。

糖尿病腎症を防ぐため、食事などの生活習慣の見直しは大切です。


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糖尿病と低血糖

糖尿病では低血糖状態になった場合にも備える必要があります。

糖尿病と低血糖、反対の事柄です。

高血糖状態で身体に大きな悪影響がおよぼすのが糖尿病ですが、糖尿病の治療には低血糖への備えがないと、生命が危険になる確率が高いです。

糖尿病の症状が中ぐらいから重い人は日常の備えが大切といわれます。

糖尿病ではインスリン補給している人も大勢います。

インスリンは血糖値を低くする作用があるため、糖尿病治療には必要な成分です。

しかし、インスリンが効きすぎた、うっかり過剰に投与した、運動・空腹などから低血糖状態となった場合には、発汗や手足のふるえ、目まいが起こったり、ろれつが回らない状況となります。

さらに進めば意識障害が起こり、低血糖昏睡で倒れてしまいます。

低血糖昏睡を起こすと、手当てしなければ最悪死ぬこともあり、糖尿病では気をつけねばならない症例です。

低血糖の予防法は、低血糖状態だと気づいたら、ブドウ糖を食べて安静にすることです。

ブドウ糖がなければ砂糖などでも大丈夫です。

日常生活で外出する時にもブドウ糖を携帯するのが大切です。



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糖尿病と妊娠

糖尿病患者が妊娠することは、昔は非常に危険なことといわれました。

高血糖の状態では奇形が多くなると指摘されていて、胎児が成長しすぎたり、生まれた後に低血糖になる確率もあったため、糖尿病患者の妊娠は避けるように医者からアドバイスされることも多かったのです。

しかし、現在では血糖コントロールの方法も安定していて、妊娠・出産もできますが、健康な妊娠よりも注意が必要です。

妊娠を望むならば医師と話し合い、薬物治療の内容を変えたり、あらかじめ厳重に検査することが大切でしょう。

糖尿病を妊娠中に発症させる場合もあります。

妊娠糖尿病として知られるもので、妊娠中にだけみられます。

妊娠中はホルモンがいろいろと分泌されますが、胎盤からインスリンの働きを邪魔するホルモンが出るのが原因といわれます。

多くの妊婦が妊娠糖尿病は注意しなければいけないといわれています。

妊娠中毒症や流産・早産のリスクが上がるからで、食生活などに気を配りましょう。

妊娠糖尿病は妊娠中の一時的な症状で、出産後は治るといわれますが、人によってはそのまま糖尿病に移ってしまう人もいます。

血糖値などの定期的な検診が大切です。



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糖尿病と肥満

糖尿病を発症させる原因で一番大きいのが肥満です。

肥満は健康に害をあたえる要因では、アルコールやタバコなどと同じで、避ける必要がある代表的なものです。

糖尿病の人は肥満であることが多いですし、動脈硬化や心筋梗塞など肥満が原因で起きる疾病は数多くあります。

糖尿病を予防するためには、まず、肥満にならないことが大切とされるぐらい、肥満がおよぼす影響は重大です。

体内には脂肪細胞というエネルギー源の保存に役立つ細胞があります。

肥満になると脂肪細胞がインスリンの血糖降下を邪魔する働きをすることが分かってきました。

糖尿病治療で一番も大切な目標は、インスリンの感受性を健康な状態に近づける点です。

肥満状態では目標に到達できないことはハッキリしています。

体重を減らせば血糖コントロールもしやすくなります。

肥満の人は食事や運動に注意し、ダイエットに心掛けるようお薦めします。



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糖尿病の動脈硬化による狭心症・心筋梗塞

心臓の筋肉に栄養や酸素をおくる働きをする冠動脈に動脈硬化が起こると、虚血性心疾患が生じます。

虚血性心疾患とは、血液の流れが十分でないため、心臓の筋肉が酸素不足になり起きる障害のことです。そして、虚血性心疾患には、狭心症と心筋梗塞があります。


狭心症とは、冠動脈が動脈硬化によりせまくなり、心臓に十分な血液が流れなくなることで、運動などをすると、心臓の筋肉が酸素不足になり、狭心痛が起こる症状のことです。

狭心痛は、みぞおちから胸の中央にかけて圧迫感と痛みを感じる症状です。発作はだいたい 5分ぐらい続いて、安静にしていると痛みは自然と消えていきます。


冠動脈が血栓(血液の塊)によって詰まり血液がまったく流れなくなると、心臓の筋肉の細胞が死んでしまいます。これが「心筋梗塞」です。

心筋梗塞は狭心症の痛みよりも強く激しく、胸の苦しさもさらに辛く、発作時間も長くなります。

糖尿病の方が心筋梗塞を起こすと心不全が起きる可能性が高くなるので注意が必要です。



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糖尿病の動脈硬化による脳梗塞

動脈硬化は、脳の動脈に起こると、脳卒中になる原因になります。

脳卒中でもよくみられるものには 、脳梗塞と脳出血があります。脳梗塞とは、脳の血管が詰まってしまうことで、脳出血とは、脳の血管が破れて出血してしまうことです。

糖尿病の方が脳の血管に動脈硬化が起きると、脳梗塞になる確率がとても高いといわれています。しかも、その脳梗塞は、細い動脈が狭くなって小さな梗塞が脳のいろいろな場所で起こるという特徴があります。

脳梗塞には、脳内の血管が詰まる「脳血栓症」と、脳以外の血管にできた血栓が脳まで流れて詰まる「脳塞栓症」があります。

糖尿病の方は、全身に動脈硬化ができる可能性があるので、両方のパターンで脳梗塞になる危険があります。

糖尿病による脳梗塞、小梗塞が起きると、神経細胞などに栄養や酸素がとどきにくくなるため、発作の前にめまいがしたり、ろれつが回らない、片方の目だけ見えにくい、体の片方だけがしびれるなどの症状があらわれます。

これらは一時的に血栓が脳の血管をふさいだときにあわられ症状で、「一過性脳虚血発作」と呼ばれます。

動脈硬化が進行して脳の大きな血管が完全に詰まってしまうと、突然意識を失い、最悪の結果になってしまうことも十分にあるので注意しましょう。



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糖尿病の薬物療法

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妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは

 妊娠中は、胎児にエネルギー源である糖を与えるため、胎盤から血糖を上昇させるホルモンが分泌され、インスリンが効きにくい状態となります。

妊娠すると、すい臓からのインスリン分泌を増やして血糖値を調節しますが、そのバランスが取れず血糖値が高くなると妊娠糖尿病になります(図)。わが国では糖尿病人口の増加とともに、妊娠糖尿病も増えており、全妊婦さんの10%前後と推定されています。

両親や兄弟など血縁者に糖尿病のある方、太っている方、35歳以上の方、巨大児や先天奇形のある赤ちゃんを出産したことのある方、流早産を繰り返す方などは妊娠糖尿病の危険が大きく注意が必要です。


母体・児への影響

 血糖コントロールが悪いと、妊婦さんや赤ちゃんに様々な影響が出ます。赤ちゃんの体が作られる妊娠初期の血糖値が高いと、先天 奇形の発生が高率となります。

妊娠中の血糖値が高い場合は、巨大児(4,000g以上の大きな赤ちゃん)となり、経膣分娩の際に難産となり、頭血腫、鎖骨骨折などの損傷が起こることがあります。また、生まれた後も赤ちゃんに低血糖症、呼吸障害、高ビリルビン血症、低カルシウム血症、多血症が起こることがあります。

妊婦さんにみられる合併症としては、網膜症や腎症などの糖尿病合併症の悪化、糖尿病ケトアシドーシス、尿路感染症、産科的な合併症としては、妊娠高血圧症候群などのほか、羊水過多症、流産、早産などがあります。



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糖尿病と感染症

なぜ感染しやすいのか

感染を防ぐバリアが弱くなる
 感染から身を守るためには、まず細菌などの外敵から身を守る強いバリアが重要です。体の表面であれば皮膚、また眼、鼻、気道、消化管などであれば粘膜がバリアとなります。
 糖尿病患者さんは、皮膚の代謝が障害されています。そのため、新しい皮膚への入れ替わりが遅れて皮膚は乾燥し、傷つきやすくなっています。また、バリアである粘膜を保護するもの、例えば目では涙、胃であれば胃酸などの量も減少しているため、細菌にさらされやすくなっています。このように糖尿病では、最初に感染を防ぐためのバリアが弱くなっています。

感染を防ぐ機能の低下
 バリアを通過して、細菌などが体内に侵入すると、白血球が集まってきて細菌などを食べてしまうことで、殺菌し、感染を防いでいます。糖尿病患者さんでは、この白血球の戦う力が低下しています。
 また体には、一度感染した細菌に対して、それに対抗する抗体を作り、次の感染に備える仕組み(免疫)があります。高血糖状態は免疫に関係する細胞の働きも低下させるため、正常な免疫システムが保たれなくなります。
 このように糖尿病患者さんでは、感染を防ぐ働きが弱くなっているため、感染しやすい状態にあるのです。

細小血管障害
 血糖値が高い状態が長く続くと、細い血管が傷み、血液の流れが悪くなります(細小血管障害)。細菌が感染した部分に血液が行き渡らないということは、細菌と戦う白血球が、細菌のいる場所に届かないことになり、細菌がより繁殖しやすい状態になってしまうのです。また、せっかく使用した薬(抗菌薬など)も、感染した場所に到達しにくいということにもなります。

糖尿病性神経障害
 糖尿病の三大合併症のひとつである神経障害がある場合、感覚が鈍っているために、傷や感染の発見が遅れることがしばしばあります。発見の遅れは、治療の開始時期の遅れにもつながり、感染症の重症化にも影響をおよぼします。



糖尿病でかかりやすい感染症
 糖尿病では全身のあらゆる場所で、感染症が起こりやすくなっています。

歯周病
 糖尿病患者さんは、唾液の分泌量が減少している上に、糖濃度が高いため、歯垢(プラーク)が付きやすく、歯周病菌が増殖しやすい状態になっています。食物を噛むことは、同時に口の中がこすれたり、傷つくことでもあるので、口の中は感染を起こしやすい場所なのです。

尿路感染症
 尿路感染症は女性に多い病気ですが、糖尿病がある場合には男性もかかりやすくなります。神経障害のために尿がたまっても感じにくくなったり、尿を出す力が弱くなったりします。そのため、尿が長時間膀胱に留まり、細菌が繁殖しやすくなるのです。また、尿が膀胱から逆流することもあり、膀胱炎だけでなく腎臓の病気などを起こすこともあります。

肺炎・肺結核など
 肺炎は、ほかの人からの飛沫や接触感染で起こり、糖尿病患者さんではかかりやすくなっています。また、腎障害や循環障害を合併する人は、重症化しやすく、死亡する人も多いため、注意が必要です。インフルエンザや肺結核の発症率も高いことが知られています。

皮膚、足病変
 糖尿病患者さんでは、白はくせん癬菌(水虫)や真菌の感染が増加しています。当科で足の皮膚にセロテープを貼って採取した検体を検査したところ、糖尿病患者さんの約90%から白癬菌や真菌が検出さた。



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糖尿病とタバコ

タバコ有害物質の塊といえ、糖尿病にもとても悪い影響をおよぼすといわれます。

糖尿病を悪くさせる要因に、タバコは過食や運動不足などと同じく結び付いているといわれます。

糖尿病は血糖値が上昇すことで合併症をたくさん招きます。

タバコも心筋梗塞をはじめ、体にいろいろなダメージをおよぼします。

糖尿病の傾向がある人には危険性をいっそう高めてしまいます。

糖尿病患者の体内では、高血糖で血液の粘度が上がって血流が遅くなりますが、タバコもニコチンにより血小板が付着しやすくなり、血行が邪魔されることが知られています。

このことから、糖尿病の人がタバコを吸っていると、心筋梗塞や脳梗塞、狭心症、動脈硬化が起こりやすくなり、合併症をさらに深刻にします。

糖尿病にタバコはダメとされるのは、あまりにも健康被害が深刻なためです。

血圧が高めの人でも禁煙すると低くなることもあります。

胃腸の調子も良くなってきますし、肺ガンを避ける意味でも禁煙は大切です。




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