糖尿病と感染症

糖尿病と感染症

糖尿病の人は感染症にかかりやすく悪化しやすいのです。

人間の体は、体内に侵入しようとするウイルスや細菌と常に戦っています。これを感染防御機構といいますが、糖尿病では次のことから、感染防御機構が容易に破綻してしまうのです。

(1) 好中球の貪食機能の低下
 好中球〈こうちゅうきゅう〉は白血球の成分のひとつで、体内にウイルスや細菌が侵入すると、それを取り囲んで食い殺します(貪食〈どんしょく〉)。血糖値が高くなると、この機能が低下します。

(2) 免疫反応の低下
 免疫反応とは、一度感染した病原体に対し、体内でそれに対する抗体が作られ、次に同じ病原体がからだに侵入しようとしたときに、それを防ぐように働く仕組みのことです。高血糖では、この免疫反応も弱くなっています。

(3) 血流が悪くなる
 高血糖では、細い血管の血液の流れが悪くなります。このような状態では、酸素や栄養が十分に行き渡らず、細胞の働きが低下したり、白血球が感染部位に到達しにくくなって、感染しやすくなります。内臓の血流も悪くなっているので、肺炎や胆のう炎、膀胱炎、腎炎など、内臓の病気も起こりやすくなります。
 さらに、感染で受けたダメージの回復にも時間がかかりますし、抗生物質などの薬物治療でも、薬が感染部位に到達しにくいため、薬の効果が弱くなります。

(4) 神経障害が感染・悪化の一因に
 糖尿病の合併症の神経障害があると、内臓の活動が乱れやすく、膀胱炎や胆のう炎の原因になります(コラム参照)。また、痛みを感じる神経も障害されるので、症状が現れにくく、感染症に気付くのが遅れ、その間に病気が進行してしまいます。

(5) 血糖値がより上昇する
 一度細菌類に感染すると、インスリンを効きにくくする物質(サイトカインなど)が多くなって、血糖値は普段よりも高くなります。このことが糖尿病の状態をより悪くしてしまい、感染症をさらに進行させてしまうという悪循環が生まれます。


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